確定申告が必要だけど、所得税が安くなる「医療費控除」を説明するための記事を作ってみた

医療費控除でなぜ所得税が安くなるのかの確認

所得税という税金がどのような過程で算出するのかを所得税からさかのぼるかたちで確認してみたいと思います。

まずは所得税の計算式を確認!

所得税は次式で算出されます。(※実際納付額はさらに税額控除を含めることになります)

所得税 =(課税される所得金額 – 控除額)× 税率

この式でいう、控除額と税率については、所得金額によって次の同じ表の中でわかります。

課税される所得金額税率控除額
1,000円 から 1,949,000円まで5%0円
1,950,000円 から 3,299,000円まで10%97,500円
3,300,000円 から 6,949,000円まで20%427,500円
6,950,000円 から 8,999,000円まで23%636,000円
9,000,000円 から 17,999,000円まで33%1,536,000円
18,000,000円 から 39,999,000円まで40%2,796,000円
40,000,000円 以上45%4,796,000円

簡単に表の扱い方を確認してみます!

例1)課税される所得金額320万円の場合、上表の「1,950,000円 から 3,299,000円まで」に該当するから税率は「5%」、控除額は「97,500円」であるから

3,200,000×5%-97,500円=62,500

例2)課税される所得金額800万円の場合、上表の「6,950,000円 から 8,999,000円まで」に該当するから税率は「23%」、控除額は「636,000円」であるから

8,000,000円×23%-636,000円=1,204,000円

次は「課税される所得金額」を確認!

課税される所得金額 = 総所得金額等 - 所得控除

総所得金額等は、給与所得、事業所得などを指し、所得控除は、今回のメインテーマである「医療費控除」を含む14種類のものをいいます。

また、所得控除は、確定申告書では「所得から差し引かれる金額」と記載されています。

以上より、所得税を減らすという節税を実現するためには、「税率」と「控除額」は「課税される所得金額」を参照することにより自動的に決定されるため、所得控除を増やすということがひとつの手立てとなってくるのです。

年末調整を行う会社や税務署・市役所等の行政が勝手に行ってくれるものではないのでぜひ確認してみてください。

所得控除をざっと確認してみます

  • 雑損控除…災害等により住宅家財等に損害を受けた場合の損失
  • 医療費控除…今回のメインテーマ。医療のために支払った金額
  • 社会保険料控除…健康保険料等の支払った金額
  • 小規模企業共済等掛金控除…「小規模企業の経営者のための退職金制度」ともいわれる
  • 生命保険料控除…介護医療保険料等の支払った金額
  • 地震保険料控除…地震等損害部分の保険料等の支払った金額
  • 寄付金控除…国等に対し特定のものを支払った金額。ふるさと納税はここに該当。
  • 障害者控除…所得税法上の障害者に該当する場合
  • 寡婦・寡夫控除…ひとり親に該当せず、夫・妻等と一定の関係にある納税者
  • ひとり親控除…ひとり親に該当する納税者
  • 勤労学生控除…勤労学生である納税者
  • 配偶者控除・配偶者特別控除…控除対象配偶者がいる納税者
  • 扶養控除…所得税法上の控除対象扶養親族がいる納税者
  • 基礎控除すべての納税者が対象

医療費控除は2つの選択肢があります!

医療費控除には、「通常の医療費控除」と特例と位置付けられる「セルフメディケーション税制」と呼ばれる2つあります。

2つ同時に適用することはできず、どちらか一方のみの選択となります。

下記ではまず「セルフメディケーション税制」、その次に「通常の医療費」を説明していますが、前者は病気の予防等の取り組みをしている方の金額が多い場合、後者は傷病の治療等に費やした金額が多い場合に選択することになることになるのではないかと思います。

「セルフメディケーション税制」について

「セルフメディケーション税制」は、平成29年1月1日から令和3年12月31日までの間の制度になります。「セルフメディケーション税制」「通常の医療費」以外の医療費です。

適用を受けるためにはどうしたらよいの?

健康の保持増進及び疾病の予防への取組として、一定の人間ドック・予防接種・がん検診などを行っている居住者が対象となっています。納税者が取組を行ったことを明らかにする書類は領収書、結果通知等となります。

セルフメディケーション税制の対象となる支出

「通常の医療費」と比べるとわかりやすいものとなっており、「セルフメディケーション税制の対象商品である」旨が表示されている商品が対象となっている商品を購入した金額となります。

結局、所得控除としての医療費控除の金額は?

実際に支払った金額(保険金等で補填される金額があれば控除します)から1万円2千円控除した金額です(8万8千円が限度額となります)

「通常の医療費」について

まず医療費控除の計算式を確認!

医療費控除 = (支払った医療費 - 保険金等で補填される金額) - 10万円

「支払った医療費」についてですが、請求されているがまだ支払っていないような、未払いとなっている医療費は対象外となります。

過去の分でもあくまでも支払ったという現金主義がポイントです。

また、「誰の」医療費という点ですが、納税者自身(確定申告書を出す方)と生計を一にする配偶者やその他の親族となります。

「保険金等で補填される金額」は、生命保険等で支給される入院費給付金などのことをさし、医療費の実質負担額にするために計算式に組み込まれています。この点を考慮することが漏れている事例が多いようです。

「10万円」は、総所得金額等が200万未満の場合は、総所得金額等の5%の金額に置き換わります。

なぜ医療費控除を算出するにあたって10万円を控除するのかですが、「医療費は誰でも少なからず支出するものと考えられているから」というもののようです。結果的に、少ない金額、例えば、数千円の医療費で、確定申告を行うという事務負担は減ることになります。

医療費の対象となる支出

国税庁ホームページに記載ありますが、読み易いように一部省略等の加工しましたのでご参照ください。

  • 医師等による診療等(健康診断の費用、謝礼金は原則として含まれない)
  • 治療等に必要な医薬品購入
  • 病院等へ収容されるためのサービス料
  • はり師等による施術料
  • 保健師等による療養上のお世話料
  • 助産師による分娩の介助の対価
  • 介護福祉等による一定のかく痰吸引及び経管栄養の対価
  • 介護保険等制度で提供された一定の施設・居宅サービスの自己負担額
  • 医師等による治療等を受けるために要した、交通費や医療用器具等
  • 骨髄移植推進財団に支払う骨髄移植のあっせんに係る患者負担金
  • 日本臓器移植ネットワークに支払う臓器移植のあっせんに係る患者負担金
  • 高齢者の医療の確保に関する法律に規定する特定保健指導

また、人間ドックの費用、健康増進のためのサプリメントの購入費、近視矯正用メガネの購入費用、医者等に対するお礼などは医療費対象外となるように医療のためにお金を支出していても対象外となるものがありますので、ネットで調べてもわからない場合は税務署職員(やさしい人ばかりだと思いますので)に気軽に聞いてみてください。

医療費控除をするためには領収証が必要となりますが、万が一、紛失や廃棄をしてしまった場合、支払った先の住所・名称・支払金額が診察券や家計簿等を税務署に提出することで医療費控除が認められることになっています。家計簿については、医療費の記載のみのものは少なくとも家計簿ではないという見方があります。再発行してもらうという対応も可能ですが、どちらにせよ手続きが煩雑かと思いますので、紛失や廃棄をせずに、手元にあるものは5年間は保管するようにしてください。

医療費控除は所得税だけでなく住民税も安くなる

所得税と住民税の計算は完全に一致するものではありませんが、ほとんど同じであり、医療費控除は同じ計算です。住民税は一律10%であり、医療費控除の節税効果(だいたい対象医療費の10%)は高いものとなっています。また、所得税の確定申告を行うと住民税に関する手続きを行ったことになります。

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