税理士と公認会計士の違いは?

はじめに

税理士と公認会計士は、弁護士、司法書士、行政書士、社会保険労務士、不動産鑑定士、弁理士、中小企業診断士などとともに士業といわれる国家資格です。

税理士と公認会計士は、試験では簿記1級(受験資格に関係ありませんが、前哨戦として受験する人も多いと思います)の先にあり、事業としても会社の会計に関連するものなので、違いってなんだろうと思われることも多いようです。

今回は、試験制度、特に一部科目合格、免除制度について、焦点をあててみました。

税理士と公認会計士の試験は?

税理士、公認会計士ともに試験のみ合格すれば、ただちに登録、士業を名乗れるものではありませんが、試験は以下の通りです。

税理士試験について

例年8月中旬に実施され、3日間に亘ります。

試験科目は全11科目あり、そのうち5科目に合格する必要があります。

合格する必要がある5科目のうち、2科目は簿記論と財務諸表論が必須、1科目は法人税法か所得税法で必須です。

残り2科目は、相続税法、固定資産税、国税徴収法、(酒税法か消費税法)、(事業税か住民税)を選択することになります。酒税法と消費税法を選択することはできなくなっています。

5科目すべてに一度で合格する必要はなく、例えば、2年ごとに1科目合格するということも可能であり、合格した科目は期限なく有効です。

公認会計士試験について

マークシート方式の短答式試験、筆記の論文式試験の順に合格する必要があり、短答式試験は年2回あり、12月上旬、5月下旬の1日間、論文式試験は年1回であり、8月中旬の3日間に亘ります。

試験科目について、短答式試験が企業法、管理会計論、監査論、財務会計論の4科目です。

論文式試験が会計学、監査論、企業法、租税法の4科目が必須となり、経営学、経済学、民法、統計学の4科目のうち1科目選択することになります。

短答式試験は合格すれば以後2年間、短答式試験が免除されます。

論文式試験について、論文式試験丸ごとで合格できなくても、ひとつの科目でよい成績を得た科目については、その科目については以後2年間免除されます。

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まとまった時間をとれる人は公認会計士を選択しがち

税理士の科目合格は生涯、公認会計士の科目合格は有期ということから、公認会計士試験に合格するためにはある程度まとまった時間必要ですので、大学生は公認会計士試験を選択しがちかもしれません。

公認会計士試験の旧制度は免除制度がなかったため、2006年より新制度になり、社会人が受験しやすくなったといわれています。

税理士試験は、それ以前より科目制度があったため、ある程度の期間で計画的に仕事と試験の両立を図り、試験合格を目指せるものでした

税理士と公認会計士の業務

税理士の独占業務

  • 税務代理
  • 税務書類の作成  
  • 税務相談

納税者に代わって税務に関する業務を代行する場合や納税者の税務に関する相談を行う際は税理士資格が必要になります。

個人や会社の方が、会計や税金について困っているとき、特に税務署が絡むことが濃厚と想定されるときは、税理士に相談されることが多いと思います。

公認会計士の独占業務

会計監査が独占業務になります。

法令等の規定によって、株式会社(上場企業や大会社等)、学校法人、社会福祉法人、医療法人、地方自治体等の幅広い対象について、独立した立場から監査意見を表明し、財務情報の信頼性を担保します。

特に、上場企業の監査を行う事務所は、登録制度があり、独占性が強まるとともに、業務品質の確保が図られています。

IPO(新規上場)、大会社に該当する、一定規模以上の社会福祉法人、医療法人に該当するような場合は、会計監査が必要であるため、公認会計士に相談することになります。法定監査に関する事項は、契約から一事業年度の監査報告書提出まで、法などに定められていることが多いため、かかる時間の弾力性がそれほどないため、早めに相談する必要があります。

独占業務以外の業務

税理士、公認会計士ともに独占業務以外の業務、例えば、事業承継やM&Aなどに関連するコンサルティング業務を行うことも当然可能です。

おわりに

私が資格の受験勉強に励んでいたころからいわれていたことだと思いますが、税理士は個人や中小企業の税務、公認会計士は大企業というすみわけの考え方があり、たしかにそれも一理あります。

ですが、公認会計士も、税理士登録後に個人会計事務所を開業し、個人や中小企業の税務をメインにしている者もいますし、税理士も、KPMG、EY、デロイト、PwC、いわゆるBIG4系や準大手等の税理士法人に所属し、大企業や国際税務関連の仕事をしている者もいます。

試験に臨むときの時間などの資源から選んだ資格の合格後に、どのように資格を生かすかという思考にキャリアは左右されると思いますので、前述のすみわけの考え方はマジョリティかもしれませんが、必ずしも正しいともいえません。

「税理士と公認会計士の違いは?」と聞かれると、端的には、税務業務と監査業務から回答させていただくことになり、税金に関するお困りごとがあるなら、税理士登録している者へということになります。

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