目次
はじめに
会計は、家計、企業会計、公会計等といわれるものを含んでいますが、今回は、企業会計です。
企業会計は、財務会計と管理会計に分けられます。
税務署に確定申告書を提出するため、株主に財政状態・経営成績を報告するためなどを目的とした財務諸表は、会計の中でも財務会計といわれています。財務会計は、IFRS(国際会計基準)、日本基準(上場企業)、日本基準を簡易にした中小企業版の基準などいくつか基準があります。
企業会計のうち、もうひとつの管理会計は、企業の経営者など企業内部のマネジメントに対して意思決定、業績評価などに有用な情報を提供することを目的とするものです。よく利用されたり、有名な概念はあるものの、特にこうしなければならないという基準は特にありません。
以下では、財務会計と管理会計についてもう少し詳しく述べてみたいと思います。
財務会計とは?
財務会計には2つの機能があるといわれています。
- 情報提供機能
- 利害調整機能
情報提供機能について
情報提供機能は、税務署、株主、債権者等という利害関係者の意思決定に役立つ情報を提供するというものです。
実際は、税務署に提出する法人税の確定申告書を作成するとき、租税の目的から財務諸表をそのまま利用されるわけではなく、例えば、減価償却費について、企業によって減耗する速さが同じわけないのにもかかわらず、原則として、減価償却費を計算するための耐用年数は同じものを強制されるが、その税務調整も、財務会計の基準に従って作成される財務諸表であるからこそ可能であるといえます。
株主、もっと広くとらえて投資家とすると、財務諸表による財務情報のみによって、投資判断を行っているわけではないですが、速報としての決算短信という情報によって、株価が動くことは珍しくないし、IFRSの導入を議論されていたころ「日本独自の基準によって、財務諸表を作成することは海外の投資家から逃げられる」といわれていました。
金融機関から借り入れを行う際、新規設立した事業でもなければ、直近期の決算書として財務情報や試算表の提出をお願いされます。これは、財務会計としての決算書や試算表という書類が、金融機関に対して情報を提供する機能があるとわかりやすい例かと思います。
利害調整機能について
企業を取り巻くステークホルダーの利害を調整する機能があるといわれます。誤解を恐れずに、簡略化すると、利益の奪い合いを調整する機能があるのです。
代表的な利害調整について、財務会計自体の規制ではなく、会社法で規定されているものですが、株主と債権者の利害を、分配可能額規制というかたちで調整を図っています。
分配可能額というのは、純資産の部を用いて計算するもので、主に利益剰余金の金額で構成されるというものになります。
元本とその成果、前者が資本金、後者が利益剰余金という例え方があるのですが、成果部分のみを配当させることにより、債権者の保護を図るというものになります。元本まで、ましてや債務超過のときに配当させてしまうと債権者にとって不都合なのです。この分配可能額の計算は、財務諸表を用います。
管理会計とは?
企業内部で、マネジメントが意思決定や業績評価に利用する会計のことであり、代表的な概念として、損益分岐点分析、部門別業績管理、スループット会計等があります。
財務会計と管理会計の違いは?
主な違いは、下の表のとおりです。
財務会計 | 管理会計 | |
提供先 | 社外の株主や債権者など | 社内のマネジメント |
作成基準 | あり | なし |
目的 | 外部への報告 | 経営管理 |
財務会計において、精度にかかわりますが、管理会計の情報を利用することがありますので、作成基準がないといっても、上場企業等はある一定程度の精度を伴っています。
また、財務会計は過去、管理会計は未来志向だといわれることがあります。
これは、管理会計の目的が経営管理、利益の最大化を目的としているために、当期の残りの期間、翌期、または3年後までの利益に貢献する情報であることが重要であることからです。
おわりに
財務会計は、少なくとも年1回は財務諸表を作成することになりますが、管理会計は、法定の期限はなく、リアルタイムの情報から、アクションプランや施策を策定、実行する場合もあります。
財務会計と管理会計の目的を理解の上、それぞれの会計制度(システム)を構築、運用することが必要となります。
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