前回の記事はこちら【実態、課題と今後の方針を明らかにするための方策としての財務諸表分析】
目次
はじめに
財務諸表分析は、収益性、流動性、生産性、成長性の4つのカテゴリー分けができます。
今回は、そのうち収益性を前半・後半に分けて、前半を戦いたいと思います。
収益性分析
収益性は、企業を持続・発展させるための利益獲得能力のことです。
プロ野球が個人的にわかりやすいので、持ち出させていただきます。
例えば、一人の打者能力を示すにあたって、わかりやすい代表的な指標はホームラン数、打率だと思いますが、もう少し詳しく評価するためには、OPS(出塁率+長打率を足したもの)という指標を用います。
よって、分析を行うということは、指標を少なくとも理解する必要があると思うのです。
収益性の指標
収益性を示す指標は以下のようなものが主です。
- 売上利益率
- 売上総利益率
- 売上営業利益率
- 売上経常利益率
- 売上当期純利益率
- 資本利益率
- 総資本利益率
- 自己資本利益率
※赤色を前半、グレーを後半とさせていただきます。
上記では、利益額ではなく、利益率によるものばかりとなっています。
理由としては、規模の違いを考慮した分析ができないということが主にあります。
売上利益率について、時系列比較をしたとき、例えば、利益額が横ばい、売上高が右肩あがりだと、「コストも右肩あがりということなので利益獲得能力という点では下がっているのかな。材料費の高騰?拡大しているから無駄が生じている?」などと考えることができます。
利益額だけをみると毎年同じように錯覚してしまいます。
資本利益率については、例えば、同じ産業のA社(利益15百万、総資産(総資本)300百万)、B社(利益20百万円、総資産800百万)という2社を比較してみます。
単なる利益額だけを比較すると、A社よりB社の方が利益額は高いです。
しかし、総資産をみると、B社はA社の2倍も資本を投下しているという規模を考慮する見方ができます。
また、例えば、時系列順に同じ会社を並べると規模が徐々に大きくなっているような場合、利益が規模と比べると微増のような状態であると、投下している資本の見合った収益獲得ができていないと判断できます。
以上を簡単にまとめると
・投下した資本を反映する収益性を分析するためには利益率となる
・他社比較・時系列比較において、規模を考慮する必要があるため、利益率となる
ということがいえます。
売上利益率のそれぞれについて
分子を各段階利益(上から、売上総利益、営業利益、経常利益、当期純利益)とし、分母を売上高としますが、それぞれ売上○○利益率といいます。
売上総利益率=売上高総利益÷売上高
売上総利益は、売上から売上原価を控除したものです。
売上原価は、製造業であれば仕入れた材料と人件費や経費なども含みますが、それ以外の産業であれば、仕入れた商品ということになりますので、売上高総利益率は、商品や製品そのものが利益を稼ぐ能力となります。
売上営業利益率=営業利益÷売上高
営業利益は、売上高総利益から販売費及び一般管理費を控除したものです。
販売費及び一般管理費には、役員、製造に関連した人件費以外の人件費(営業部や管理部等)、家賃などが含まれます。売上高営業利益率は、基礎的な利益獲得能力となります。
売上経常利益率=経常利益÷売上高
経常利益は、営業利益に営業外収益を加えて、営業外費用を控除します。
営業外収益には、雑収入、受取配当金・受取利子という金融収益が主に含まれ、営業外費用には、支払利子という金融費用が含まれます。
営業利益が本業の取引による利益といえるのなら、経常利益は本業の取引に金融の取引を加えた利益といえます。
売上当期純利益率=当期純利益÷売上高
当期純利益は、営業利益に特別利益を加え、特別損失を控除し、さらに法人税等を控除したのものです。
特別損益は、災害損失など臨時に発生する損益や固定資産の売却損益、減損損失が主にあります。
当期純利益は株主にとって配当原資、取り分です
売上当期純利益率は、最終的な利益が売上に対してどれぐらい残るかを示すものということになります。
参考:配当性向=1株当たりの配当額÷1株当たりの当期純利益
→つづき【企業の「利益を獲得する能力」の分析のまとめ-収益性分析-(後半)】