企業の「利益を獲得する能力」の分析のまとめ-収益性分析-(後半)

前回の記事はこちら【企業の「利益を獲得する能力」の分析のまとめ-収益性分析-(前半)】

はじめに

財務諸表分析は、収益性、流動性、生産性、成長性の4つのカテゴリー分けができます。

今回は、そのうち収益性を前半・後半に分けた後半部分です。

前半では収益性分析には、売上利益率と資本利益率があるということを示し、売上利益率の詳細を述べました。

今回の後半では、資本利益率をみてみたいと思います。

資本利益率

分子を利益、分母を資本としますが、分子、分母をどのようにするかという論点があります。

分母の資本について

分母は、総資本か自己資本です。今回は取り上げませんが、経営資本というのもあります。

総資本、自己資本とは何か?

貸借対照表の負債と資本を資金の源泉と捉える考え方があるとスムーズだと思います。

詳細はこちらの記事→資金拠出する側からだとリターン、資金を拠出してもらう側からだとコストという「資本コスト」-株式投資でいうところの配当利回り率-

他人資本は負債、自己資本は主に純資産となり、総資本は他人資本+自己資本(総資産のことですね)となります。

「主に」の意味は、純資産から控除するものがあるからですが後述しています。

「金融機関や社債権者等(以下、債権者)を他人とよび、株主を自己とよぶ」というイメージでいいかもしれませんね。

分子はPLというフロー、分母はBSというストックという指標はおかしい?

分子がフロー、分母はストックという「率」はおかしいので、「フロー」と「フロー」にしてあげましょうという論点があります。

一般的に、ストックをフローに擬制する方法は、期首と期末の平均値を用いることになります。

分母にどちらの資本を選ぶのか?

分子に何を用いるのかによります。

例えば、前回で、「当期純利益は株主の取り分だ」という考えをご紹介しました。

分子をその「当期純利益」を用いるのなら、分母は自己資本と総資本のどちらを使用する方が指標として効果的かと考えれば、他人資本を足している総資本よりも、自己資本のほうだと考えられます。

これは株主の立場からの資本利益率として「自己資本利益率」とよびます。

分子にどの利益を用いるのか?

売上利益率と同様に各段階利益を用いることもできますが、分母との兼ね合いから、営業利益経常利益当期純利益というPL上の各段階利益があり、PLに記載がないため少し計算が必要な事業利益などを用いる方法があります。

以上のように、資本利益率の分子と分母の組み合わせの数自体は結構あるのですが、株主、債権者、企業全体という観点からみれば、利用されている指標の数は限定的です。

株主からの資本利益率:自己資本利益率(ROE)

有価証券報告書や決算短信等という上場企業が開示している書類に記載している重要指標です。

ROE(%) = 当期純利益÷自己資本×100

上記では「主に」という言葉で自己資本を純資産の部の合計そのものというような書きぶりもしていましたが、自己資本は現在株主のみとしたいので、将来株主の新株予約権、当社グループの株主ではない非支配株主持分は除きます。

自己資本 = 純資産 – 新株予約権 – 非支配株主持分

非支配株主持分は、単体財務諸表では出てこず、連結財務諸表で出てきます(100%子会社ばかり等のケースはでてきません)。

債権者からの資本利益率:総資本経常利益率

例えば、金融機関は、企業に貸し付けを行うと、元本と利息を支払ってもらいます。そのため、興味事項は返済能力ということになります。そこでは、利息を控除している「経常利益」が望ましいと考えられています。

総資本経常利益率(%)=経常利益÷総資本×100

なお、一般的には分母が総資本であれば、利益がいずれにせよ、ROA(Return On Assets)とよんでも構わないようです。

企業全体からの資本利益率

債権者からの資本利益率では用いる利益は、利息を控除した後のものと述べましたが、企業全体からは利息を控除する前のものが望ましいといわれています。

そのため、営業利益や事業利益を用いることになります。

営業利益は損益計算書に記載がありますが、事業利益はありません。

事業利益は、営業利益に受取利息と受取配当金という財務活動の成果も加えたものです。

事業利益=営業利益+受取利息+受取配当金

総資本営業利益率

企業全体の資産効率を示しています。

総資本営業利益率(%)= 営業利益 ÷ 総資本 × 100

総資本事業利益率

事業利益を考慮すると、総資本営業利益率の修正版の位置づけです。

営業利益は、営業活動、事業利益は営業活動と財務活動の成果を表しているので、企業の収益性を財務活動まで加えるのかという点がポイントです。

総資本事業利益率(%)= 事業利益 ÷ 総資本 × 100

おわりに

資本利益率を求める計算式は、

資本利益(%)= 利益 ÷ 資本 × 100

ということになるのですが、売上というものを関与させると

資本利益(%)= 利益 ÷ 売上 × 売上 ÷ 資本 × 100

という式になり、利益÷売上 は前回の売上利益率のこととなり、売上÷資本 は資本回転率というものになるので、資本利益率は売上利益率と資本回転率に分解でき、資本利益率の分析に用いられます。

今回の経営分析シリーズでは、資本回転率について触れないのですが、別の機会で触れたいと考えています。

つづき【企業の「支払能力の分析」まとめ-安全性分析-】

関連記事

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です