売上高を用いて、「回転率」と「回転期間」という財務諸表分析

回転期間とは?

財務諸表分析・経営分析の中でも、改善の糸口になりやすいもののうちに、回転期間というものがあります。

回転期間は、売掛金という資産でいうと、売掛金が1回転(計上されて回収するまで)するのにどれだけの期間がかかるかというものです。

年間売上高が150,000千円、期末の売掛金が30,000千円という財務数値でしたら、まず、月商(1月当たり売上高)を算出(150,000千円÷12=12,500千円)します

それから、その月商で期末の売掛金を割ると、30,000千円÷12,500千円=2.4か月ということになります。

計算式から、期末の売掛金に何か月分の売上がたまっているのか(または、何か月で決済を行っているのか)という見方もできますね。

売掛金だけではなく、電子債権や受取手形(割引・裏書手形も含む)も含めて、一括りで「売上債権」として回転期間を分析することになります。売掛金のみの分析はあまり意味がないと思っていただければと思います。

また、回転期間は、売上債権だけではなく、棚卸資産仕入債務というものに適用することが一般的です。総資産有形固定資産は、後述の回転率で分析されることが多いといわれます。

回転期間(か月)= 資産・負債残高 ÷ 月商

※分子がストック、分母がフローとなっていますので、ともにフローにするため、分子には期首と期末の平均を用います。

売上債権回転期間

売上債権回転期間=売上債権残高÷月商(一月当たり売上高)

売上債権回転率は、あくまでも全体感ですが、別の言い方をすると、決済条件ということになります。

例えば、個々の取引条件が2か月で決済なのに、売上債権回転率が6か月を示すと、不自然さがあります。ひとつの可能性として、期末直前に多額の売上が計上される業態だという仮説が立てられます。

また、売上債権回転率は、売上高の架空計上を疑われる場合に、異常値を示すことが多いので、何かと取沙汰されやすい指標なのかもしれません。

棚卸資産回転期間

棚卸資産回転期間=棚卸資産残高÷月商

売上債権回転期間とほぼ同じかと思います。

仕入債務回転期間

仕入債務回転期間=仕入債務残高÷月商

売上債権回転期間とほぼ同じかと思います。

なお、棚卸資産回転期間と仕入債務回転期間の分母について、売上ではなく、売上原価を用いるような考え方もあります。理由としては、棚卸資産・仕入債務は仕入高にかかるのであって、売上高ではないから、仕入高を用いる方が望ましいという考え方です。問題や受験に対峙している場合は指示に従ってしてください笑 実務では、あくまでも糸口になりうるものですので、指標の使い手によるかと思います。

回転率とは?

「率」とついていますが、1年に何回回転するかという意味合いです。

資産・負債を利用して、その資産の何回分の売上を計上しているかというものになります。

逆の意味でいうと、例えば、総資産2億円が2回分の年間売上を稼いでいるというと、売上は4億円になります。

回転率=年間売上高÷資産残高

回転率は、効率という観点から、総資産(総資本)や有形固定資産の分析に利用されます。

総資産回転率(総資本回転率)

総資産回転率=売上高÷総資産

産業別の平均値がいわれることが多い指標となりますが、回転という言葉そのままに小売業と製造業を比較すると小売業の方が高いものとなります。

製造業は1、小売業は2という相場を覚えておいていただければ、何かの役に立つかもしれません。

有形固定資産回転率

有形固定資産回転率=売上高÷有形固定資産

回転率は効率を示す指標であるから、設備投資(有形固定資産)投資の効率性をみる指標になります。

収益性分析の資本利益率を分解してみる

記事【企業の「利益を獲得する能力」の分析のまとめ-収益性分析-(後半)】で扱った資本利益率ですが、分解して、資本利益率の増減要因を分析することがあります。

資本利益率 = 利益÷資本 = 利益÷売上高 × 売上高÷資本

ここで使用する利益と資本はそれぞれ、経常利益と総資本とします。

上記の式にある利益÷売上高は、経常利益率売上高÷資本は、当記事で扱った総資本回転率となります。

要は、資本利益率の成長性分析を行った際、経常利益率と総資本回転率の成長性分析を行えば、何かしらの糸口になるかもしれませんし、また、資本利益率の良しあしは、経常利益率と総資本回転率を用いることにより説明することできます。

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