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持分法のイメージづけをしよう
持分法は、該当する会社(持分法適用会社)をどのように連結財務諸表に取り込むかという連結会計のひとつの論点になります。
連結会計②で単純合算ということを取り上げました。そこでは、貸借対照表、損益計算書、株主資本等変動計算書を合算していました。
作業という観点からいうと、持分法適用会社は単純合算をせずに連結財務諸表に取り込むのです。
具体的には、保有している現金預金等の資産項目、買掛金等の負債項目、また取引規模をあらわす売上高等を取り込まずに、最終的な成果を表す「当期純利益」のみを取り込みます。
詳細は後述しますが、持株割合をその「当期純利益」にかけて金額を算出し、一行の仕訳として取り込まれています。
仕訳例: (借方)A社株式 300 (貸方) 持分法による投資損益 300
前提:A社の当期純利益は1,000となり親会社は30%の株式を保有している。
A社株式は、連結対照表上の資産項目、持分法による投資損益は、連結損益計算書上の営業外収益となります。
ここからは、A社の当期純損益がプラスだと、連結財務諸表上、収益が増加し、資産も増加することになることがわかります。
正確な定義は次のようになります。
「持分法」とは、投資会社が被投資会社の資本及び損益のうち投資会社に帰属する部分の変動に応じて、その投資の額を連結決算日ごとに修正する方法をいう。
企業会計基準第16条「持分法に関する基準」4項
冒頭の説明はマーカー部分に焦点を当てたものです。
持分法の適用となる会社は?
連結子会社となっている会社は対象外です。もうすでに持分法とは異なる方法で連結財務諸表に取り込んでいる(以下、単純合算の対象となる方法を連結法といいます)ので、万が一、持分法で取り込むこととなると二重で取り込むことになります。
まず、連結子会社となっていない子会社、いわゆる「非連結子会社」が持分法の適用範囲となります。何かしらの条件(だいたい金額的重要性だと思います)に合致して、会計上、子会社というけれども、連結法で連結財務諸表に取り込まないということがよくあります。その子会社は、持分法で連結財務諸表に取り込もうというものです。
次に、「関連会社」です。連結の範囲を当ブログで未だ取り上げていないので、「関連会社」は初登場です。大まかな説明ですと、「子会社には該当しないけれど、経営上重要な影響を与えられている会社」ということができます。子会社ではないので、すべての勘定科目を連結財務諸表には取り込まないけれど、損益は取り込みたいというものです。
次のように、正確な定義のご紹介も致します。念のため、本文中の「原則として」は本文中の「ただし」にかかるのであって、連結法にすることもあるという意味ではないことを追記します。
非連結子会社及び関連会社に対する投資については、原則として持分法を適用する。ただし、持分法の適用により、連結財務諸表に重要な影響を与えない場合には、持分法の適用会社としないことができる。
企業会計基準第16条「持分法に関する基準」6項
持分法の会計処理ってどうするの?
①連結決算日の損益の取り込み、②のれん相当額の償却、③未実現損益の消去、④(親会社が持分法適用会社から受け取った)受取配当金の処理のみという単純な例のみを当記事では取り扱いたいと思います。
連結財務諸表は、持分法に限らず連結法でも、グループ内の株式所有割合の変動があったときの処理、持分法適用会社の利益剰余金以外の純資産の部が変動したとき(※)の処理は、ハードルがあがりますので、今回、単純な例のみを取り扱うことをご了承ください。
※利益剰余金は、①連結決算日の損益の取り込みで織り込むことになるのです。
①~③の仕訳では、2つの勘定科目しか使用せず、また1行ですみます。それは「A社株式」勘定(投資勘定とよぶこともあります)、「持分法による投資損益」勘定です。
1行とは、例えば、借方が2行、貸方が1行になることにより仕訳として複数行にならないということをいいます。
④では、投資会社が受け取った配当金はグループ内取引ということから消去するので、受け取った時の勘定科目、つまり「受取配当金」というものを使用します。
①連結決算日の損益の取込み
仕訳例: (借方)A社株式 300 (貸方) 持分法による投資損益 300
前提:A社の当期純利益は1,000となり親会社は30%の株式を保有している。
②のれん相当額の償却
仕訳例: (借方)持分法による投資損益 20 (貸方) A社株式 20
前提:のれん相当額は200とされ、償却期間を10年とした。10=200÷10年
③未実現損益の消去
仕訳例: (借方)持分法による投資損益 150 (貸方) A社株式 150
150という金額は、連結決算日に、グループ内取引を行った結果としていまだ棚卸資産として存在し、その棚卸資産(例5000)に未実現利益とされる金額(例500)に所有割合(30%)をかけた金額です。
④受取配当金の処理
仕訳例: (借方)受取配当金 54 (貸方) A社株式 54
前提:A社は180の配当を行っているため、親会社の受取分は180×30%=54となる。
①~④の仕訳を含むすべての仕訳は連結精算表上にて行われます。例えば、記事連結②で掲載した単純合算以降の列で「A社持分法」という項目を作成し、仕訳を反映させるのです。
今回の記事では、持分法適用会社の個別財務諸表の時価評価など、取り扱わなかった論点もありますが、第一歩としては、当記事の内容の理解は不可欠だと思っています。