前回の記事【企業の「利益を獲得する能力」の分析のまとめ-収益性分析-(後半)】
目次
はじめに
財務諸表分析は、収益性、流動性、生産性、成長性の4つのカテゴリー分けができます。
今回は、その4つのうち流動性分析です。安全性分析ともいいます。
流動性分析は、企業の財務上の支払能力、債務不履行(倒産)リスクを分析するものです。
指標としては、以下のものが主となります。
- 自己資本比率
- 負債比率
- 流動比率
- 当座比率
- 固定比率
- 固定長期適合率
- インタレスト・カバレッジ・レシオ
- 債務償還年数
自己資本比率 = 純資産 ÷ 総資産
総資本に占める自己資本の割合を示す指標で、指標が高いほど支払不能となる可能性が低いことを意味しています。
自己資本は、負債と異なり、返済を要しない資金であるため、支払い負担が軽減できるからです。
目安としては、50%超なら健全、20%以上が望ましく、中小企業は15%程度が平均といわれています。
負債比率 = 負債 ÷ 自己資本
自己資本比率と同じような指標で、負債が自己資本に対してどれだけあるかを示すものです。
支払不能となる可能性の観点からは、分子が小さければ小さいほど、分母が大きければ大きいほど、元本の返済という支払いが少ないということを示しているので、負債比率は低いほど財務的な安全性が高いです。
流動比率 = 流動資産 ÷ 流動負債
この指標が大きいほど企業の短期的な支払い能力があり、安全性があることを示しています。
貸借対照表の流動、固定の区分は、正常営業循環基準、1年基準によるため、おおむね、流動負債は1年以内に支払をしなければならないもの、流動資産は1年以内に現金化するものです。
流動負債>流動資産という状況では、そのまま時が過ぎれば、1年以内に資金がショートすると単純に考えることができます。
よって、流動比率が100%以上であれば、1年以内に支払不能になる可能性が低いと考えられます。また、日本では120%以上が望ましいといわれています。
逆に、流動比率が高すぎる場合は、余剰資金がある可能性があります。
当座比率 = 当座資産 ÷ 流動負債
流動比率をさらに詳細にみるという位置付けのものです。
当座資産 = 現金預金 + 売上債権 + 有価証券
流動資産と当座資産の代表的な違いは棚卸資産があるかないかです。
棚卸資産は、販売後に売上債権となるため、現金化のスピードが遅いです。それを除くことにより、流動比率の目的である「支払能力」をさらに厳しめにみることができます。
目安としては、100%以上であればよいというものとなります。
固定比率 = 固定資産 ÷ 純資産
固定資産は、長期にわたって減価償却費によって費用化するものであるため、できるだけ返済不要の自己資本で賄うことが望ましいと考えられています。
そのため、固定資産が小さく、純資産が大きいという、要は指標が小さいほど安全性が高いと考えられます。
なお、「固定資産が小さい」というのは、あくまでも支払い能力という意味での安全性だけを考えているので、収益を稼ぐための固定資産投資の必要性は別問題となります。
固定長期適合率 = 固定資産 ÷ (自己資本 + 固定負債)
固定比率の修正版という位置付けです。
固定資産を自己資本のみでカバーするのはさすがに難しいため、返済期限が長期間の固定負債を加えるというものです。
よって、固定比率と同様、この指標が小さいほど安全性が高いと考えられます。
この指標が100%超である場合は、固定資産を1年以内に支払期限が到来する流動負債も利用しているため、財務的に安定していないと考えられます。
インタレスト・カバレッジ・レシオ = 営業利益 ÷ 支払利息
借入につきものの「利子」の支払い能力を判断する指標であり、銀行の融資の際用いる安全性の指標です。3倍以上が望ましいといわれています。
債務償還年数 = 有利子負債 ÷ 営業キャッシュフロー
有利子負債を営業キャッシュフローの何年分であるかを示す指標で、最長で20年が望ましいといわれています。
営業キャッシュフローは、本業から稼いだ自由に使えるお金のことであり、キャッシュ・フロー計算書の「営業活動によるキャッシュ・フロー」のことを指しますが、簡便的に擬制する方法もあります。また、営業キャッシュフローではなく、フリーキャッシュフロー(営業キャッシュフローから投資につかうキャッシュを控除したもの)などを利用することもあります。
→つづきの記事【インプットとアウトプットの関係を分析する「生産性分析」】