連結会計⑦企業グループ内で売買したときに生じる未実現損益の消去【棚卸資産】

はじめに

連結グループを1つと考えるとき、連結グループ内の取引は内部取引となり、相殺消去します。

例えば、親会社から子会社に対する販売を行い、期末時点で売掛金と買掛金が計上されて、未決済のときのようなケースである、取引高及び債権債務の相殺消去は『連結会計⑥連結グループ内の内部取引を相殺消去する』で扱いました。

今回は、子会社が連結グループ外へいまだ販売せずに在庫となっているケースが対象となります。

親会社が利益をのせて販売する場合、子会社で計上されている棚卸資産には連結グループ内での取引で膨れていることになります。膨れているので萎ませましょういう処理が必要となります。親会社は未実現利益をもっていることになることになり、これを消去する必要があります

親会社では利益を20計上し、子会社から連結グループ外の販売先へ販売されていないため、連結上はその20という利益は未実現であり、子会社の棚卸資産は20だけ内部取引で膨れていることになるので、処理が必要となるわけです。

注;今回の記事は税効果会計を無視しています。

未実現損益の消去方法

未実現損益の消去の仕訳を作成するときは、販売の向きがどのようになっているのかに気をつける必要があります。

親会社から子会社への販売は「ダウン・ストリーム」、その逆の子会社から親会社への販売は「アップ・ストリーム」とよびます。親を上、子を下として販売の向きでダウン、アップと覚えるのがよいと思っています。

未実現損益の消去について、ダウン、アップのどちらにせよ、未実現損益を全額消去します。

が、未実現損益の負担を、親会社と非支配株主の間でどうするのかという論点が生じてきます。

ということは、未実現損益を持っている方(未実現を含んでいる在庫の反対側)で、非支配株主持分があるときに負担という考え方が生じます。要は、アップ・ストリームのときに非支配株主持分にも負担させる仕訳があります。

※ここから連結修正仕訳のみを考えていますが、親会社と子会社ともに個別上の財務諸表で正しい処理をしているので、単純合算時点では未実現損益分が膨らんでいるものを、「萎ませる」処理に焦点をあてているためと強調します。

ダウン・ストリームの仕訳

前述の取引を用いると、親会社が未実現利益20あり、子会社の在庫に20の未実現利益があります。仕訳作成の覚え方のポイントとして、在庫を萎ませたいので、貸方に棚卸資産a/c、その反対の借方に売上原価a/cとするという覚え方がよいかと思います。

(借)売上原価  20  (貸)棚卸資産  20

アップ・ストリームの仕訳

子会社から親会社に販売したときのことです。

子会社に未実現利益20あり、親会社の在庫に20の未実現利益があるということにすると、まず未実現利益は全額消去するので、ダウン・ストリームと同じ仕訳になります。

(借)売上原価  20  (貸)棚卸資産  20

次に負担ですが、非支配株主持分が20%とすると、未実現利益20のうち4(=20×20%)は非支配株主持分が負担すべき、親会社が16負担すべきとなります。

費用(売上原価a/c)で20計上しているので、収益を4計上すると、純額16で親会社が負担すべき額を表せます。その収益で用いる勘定は、非支配株主に帰属する当期純利益a/cです。

(借)非支配株主持分  20  (貸)非支配株主に帰属する当期純利益  20

未実現損益の消去方法の考え方(補足)

前述まででは、未実現損益は全額消去して、その負担は親会社と非支配株主持分の割合によるということをお伝えしました。これは、簿記検定や実務で採用されている考え方です。

制度で採用されている「全額消去・持分比率負担」という方法だけでなく、全額消去という点では同じですが、負担はすべて親会社という考え方消去と負担も親会社持分のみという考え方というのもありますが、会計を研究したいレベルでないと知っているから、知らないからどうとかはないので、軽くスルーしてください。

未実現損益消去の翌期は実現する

全額消去した未実現損益は、翌期では外部へ販売し、実現しているものとして仕訳を作成します。

仮に、販売していなくても、その翌期の在庫に未実現損益が含まれていれば、「まだ販売していない」ということを考慮することになるので、本当に販売されたかどうかを気にせず、「未実現損益消去の実現仕訳」を作成してください。

作成方法は、前期末で作成した「未実現損益消去仕訳」の反対仕訳ですが、開始仕訳も必要です。

ダウン・ストリームの場合

【前期末(前述と同じ)】

(借)売上原価  20  (貸)棚卸資産  20

【当期末】

開始仕訳

(借)期首利益剰余金  20  (貸)棚卸資産  20

未実現損益消去の実現仕訳

(借)棚卸資産  20  (貸)売上原価  20

開始仕訳と未実現損益消去の実現仕訳を見比べると、開始仕訳の貸方と未実現損益消去の実現仕訳の借方が棚卸資産で、同じものなので、ひとくくりにして(棚卸資産a/cを消去して)、

(借)期首利益剰余金  20  (貸)売上原価  20

とすることもできます。試験ではこちらの方がスピードあがりますね。

アップ・ストリームの場合

【前期末(前述と同じ)】

(借)売上原価  20  (貸)棚卸資産  20

(借)非支配株主持分  20  (貸)非支配株主に帰属する当期純利益  20

【当期末】

開始仕訳

(借)期首利益剰余金  20  (貸)棚卸資産  20

(借)非支配株主持分  20  (貸)期首利益剰余金  20

未実現損益消去の実現仕訳(【前期末(前述と同じ)】の反対仕訳)

(借)棚卸資産  20  (貸)売上原価  20

(借)非支配株主に帰属する当期純利益  20  (貸)非支配株主持分  20

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